一期一会 ~和歌山市 H様(女性)

わたしたちがお食事に行くお店の店長のお母さまがお亡くなりになったと連絡がありご依頼を承りました。

病院にお迎えに行かせていただき自宅にご安置をいたしました。
ご自宅にはH様のご主人と次男様がお待ちでした。ベッドにご安置させていただくとその姿を見ていたご主人と次男様は涙を流されていました。
お2人はもう一度元気に自宅へ戻ってくると思われていたのでしょう。H様にドライアイスをあてるために「バスタオルを貸してください」とお願いするとお辛いなか涙を流しながら準備してくださいました。
H様のお顔はお釈迦様のお亡くなりになったときのお顔同様に「半眼半口」。宗旨によってはとても大切にされている表情ですので、こちらの判断で目やお口を勝手に閉じることはできません。次の日にお化粧をするととても綺麗になりましたよ。

ご安置後はご長男である喪主様とご葬儀について打合せです。途中でデイサービスのスタッフの方がお越しになり「H様はまたデイサービスに戻ってこられると思っていました」と仰り手を合わされました。
スタッフの方からH様のことを伺うと、ピンクが好きでおちょけるとこもあり、とても可愛く皆様に愛され慕われていたとのことでした。

喪主様は所々に冗談を言いながら普段と変わらない表情で対応されているように見えていました。飲食店をされていることから、私は喪主様に対して「お母さんのお好きだった食べ物や食べさせてあげたかった物で、お疲れでなければお弁当を作ってあげていただけませんか?」と伝えたところ、「あっ、なんかグッとしてきたよ~」と少し真剣で悲しさが見える表情がありました。
長男、喪主、男性という立場はしっかりしなければと思われているかもしれませんが、やはり母親を失うというのはすごく悲しいし心が痛むと思います。
我慢している感情を少しでも表に出していただき、火葬が終わるまでにしっかりとお別れができる空間や状況を作るのがわたしたちの使命の一つでもあります。
お別れがしっかりとできてこそ後悔なく次に進んで歩いていけるのだと思います。

枕花

次の日にご納棺後、市斎場にご移動し通夜、葬儀と行いました。いつも葬儀前には故人のお顔に変化がないか確認をするようにしています。その時間になる前に式場近くで立っていると、中学生くらいのご親戚の女の子が私の前に立ち「めちゃくちゃ悲しい。よくしてもらったのにー。」と言いました。いきなりで驚きましたが子供が気持ちを発信してきたことから「死」について少し感じてもらおうと「H様を触ってバイバイする?」と言うと、想定内の言葉「こわい!」が返ってきました。
この答えがくると無理やり近づいてもらうことはできませんので、私はH様のお化粧直しを始めることにしました。
その時、その女の子に見てもらうようにしていると、だんだん近づいてきて怖くなくなった様子でしたので、もう一度「触ってみる?」と声をかけると、「うん」と言ってくれたので女の子の手を持ち一緒に触れてみました。
「冷たい」と一言でした。人が亡くなると冷たくなる、悲しい等という気持ちを少しでも経験することで、命の大切さを感じてもらえたらと思います。女の子があまりにも素直に受け止め感情を出すのを見て感動しハグしていました。

式場祭壇(おまかせ基本セットとご親族より供花2対)

葬儀お別れの時間はできる限りH様との時間をゆっくり取りました。お花を入れる前に皆様に想いを込めお声をかけながらお顔や手に触れていただきました。

H様へのお別れは涙でいっぱい悲しみのなかお花をたくさん手向けていただきました。お花でいっぱいになったお棺には喪主様が手作りをしたお母さまへの最後のお弁当を入れました。
最後の最後までお顔に触れ涙のなかお棺のおフタを閉め、喪主様より心がこもったご挨拶を頂戴しご出棺いたしました。

喪主様よりお母さまへお弁当
待合室精進揚げ
お気に入りのお店のお弁当

お葬式は料金をおさえることや派手にすることが主ではなく、小規模の家族葬が主流である昨今はご家族の様子や表情を察知し、故人とのお別れをどのように進め、心の整理をつけていただけるようにできるか、家族葬だからこそできるお葬式だと思います。葬儀会社が効率よくすべてを進めていくのはご家族のためになりません。ご家族は故人に対して行っても良いことやいけないことがわからない人がほとんどです。できるだけ時間が必要でもご家族や故人が主役のお別れにしていきたいと考えています。

H様お疲れ様でした。ご家族、ご参列いただいた皆様ありがとうございました。

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